満席のランチタイム、常連さんが動いてくれた話
うちの店は、こぢんまりとした店舗です。 広くはない。 だから昼のピークタイムには、席がぎゅうぎゅうになることがあります。
そういうときは、大きなテーブルで相席をお願いすることがあります。 1人のお客様が3組、なんてこともあります。 初めていらっしゃったお客様には、少し申し訳ない気持ちになりますね。
でも、今日はちょっと特別なことがありました。
「どうぞ、こちらへ」——その一言が店を救った
ランチタイム、店内はほぼ満席。 6人掛けの大テーブルにも、すでに2組4名のお客様がいらっしゃいました。
そこへ、若い男性2人組が入ってきました。
私たちはちょっと困りました。 案内できるような席がない。 「お名前を聞いて、順番待ちをお願いしようか」そう動こうとしたそのとき。
4名様テーブルに座っていた常連のお姉様方2人組が、すっと声をかけてくれたんです。
「ここ、大丈夫よ。」
私よりちょっと先輩のお姉様方です。 長年通ってくださっている方で、店のことをよく知ってくれている。
4名のテーブルに2名が加わる相席です。 ピッチリです。 窮屈で、本当に申し訳ないな、と思いました。
それでも、そのお姉様方は嫌な顔ひとつしなかった。「ここでいいですよ」と言って、若い男性2人を迎え入れてくれました。
2組4名のお客様は、これで見事に相席が成立しました。
コミュニケーションが生まれた、その光景
申し訳ないな、という気持ちで見ていたんですが。 しばらくして、その4名の様子を見てほっとしました。
楽しそうに話しているんです。
常連のお姉様方と、初めてお会いする若い男性2人。 なんの接点もないはずのふたつのグループが、カレーをきっかけに話に花を咲かせていました。
こういう光景を見ると、この店をやっていてよかったなと思います。 正直なところです。
飲食店って、食べ物を出すだけじゃないんですよね。 場所を提供しているというか。 人と人がたまたま隣に座って、何か言葉を交わして、それぞれの一日がちょっとだけ特別になる。 そういうことが起きる場所でありたいと、ずっと思ってきました。
今日は、お客様がそれを実現してくれました。
当店がお客様に恵まれている、という話
考えてみると、うちはほんとうにお客様に恵まれています。
混雑しているときに相席をお願いしても、嫌な顔をされることがほとんどない。 むしろ、今日のように自分から動いてくださるお客様もいる。
私たちスタッフが手が回っていないとき、ふっと助けてくれる。 「大変そうだから」と一声かけてくれる。
店というのは、場所と料理だけでできているわけじゃないんだな、と改めて感じます。 来てくれるお客様ひとりひとりが、うちの店をつくっている。 そう思います。
石垣島に移住して、この店を開いてから20年近くになります。 最初はお客様が来なくて、昼寝しようかな、と思う日もありました。 客席がうまく回らなくて、イライラする日もありました。
それでも続けてこられたのは、こういうお客様がいたからだと思います。
相席は、うちの店の「文化」かもしれない
もともと石垣島という場所は、人と人の距離が近い。 観光でいらっしゃった方も、島に住んでいる方も、カウンターに並んで座って、気がつくと話している。
それが当たり前の島です。
うちの相席も、考えてみれば同じかもしれません。 狭いから仕方なく相席、ではなくて。 その狭さがきっかけで、偶然の出会いが生まれる。
今日みたいに。
常連のお姉様方、今日は本当にありがとうございました。 若い男性お二人も、楽しんでいただけたなら嬉しいです。 またいつでもどうぞ。
相席になっても、うちに来てくれるお客様は、みんないい人たちですから。
「お昼はスパイスカレー、夜はスパイスバル」のトラベラーズカフェ朔より。人と犬の顔と名前が覚えられない店長ハンザワ♂がお届けしました

